年に何度も草刈りが必要だった砂利道を、草刈りが殆ど不要な路地庭園へとリフォーム
こちらのお庭は以前からお世話させていただいていますお施主様で、従来からの和風のお庭と以前改修させていただいた洋風のお庭の間に砂利道がありました。駐車場へつづく砂利道は草が生え、年に何度か草刈・除草作業をさせて頂いてたのですが湿気が多いせいか草刈をしても2週間くらいで草が生え困っていました。また、砂利が表面に残っていましたので、草刈の機械で除草すると、石がはねて作業性が悪くお施主さんにとっても、我々にとっても悩みの種でした。そこで、メンテナンスがかからず、かと言って無機的なコンクリートでもなく、庭への景観も壊さないよう、駐車スペースも兼ねた路地庭園をご提案しました。
Before
雑草が生え、年に何度も草刈が必要な砂利道。
Before
砂利の表面にある石が飛んでしまうため草刈り機が使えない。
Before
湿気が多いためか、草刈をしても2週間くらいで草が生えてしまう。
After
洗い出しの舗装により草の発生を無くしました。
雑草の悩みは根幹である作業自体を無くすことで解消。
After
庭の雰囲気を壊すことなく、融合できるよう自然石を有効的に採用しました。
After
既存の和風庭園と洋風庭園との動線を作り空間を一体化させました。
After
築山には日当たりに強い杉苔と木の足元には陰に強い山苔を植えました。可憐な山野草が周囲の環境に溶け込みます。
After
曲線を採用したことによって、庭園空間でありながら駐車スペースの機能性も満たします。
After
コンクリートの割れ防止、排水用のスリットもデザインに取り入れ、上空から見ると扇のように広がり、作為と無作為が織り交ざり良い化学反応を示します。
扇の庭ができるまで
①草刈機が使えない
玄関付近にまで生えた草を、一気に草刈機で刈りたいところでしたが砂利が飛ぶため、綺麗に除草もできない。
②除草剤が使えない
ガレージ付近も草が生え、湿気が多いためか草刈除草しても2週間くらいですぐに雑草が生えてしまう。植木があるため除草剤も使えないという悩みをお持ちでした。
③地面の最適化
まずは雑草ごと地面をすきとります。
④縁石の据え付け
コンクリート舗装するために、縁石を据え付けていきます。周囲の庭園に調和させるためと、無機質で殺風景な景色にならないように自然石を採用しました。作業は少し時間がかかりますが自然の曲線美を描いてくれます。
⑤石の選定
一つ一つ形が異なりますので、それぞれの石の個性を活かしながら合わせていきます。
⑥飛石の据え付け
玄関前に飛石を据えていきます。これは玄関へのアプローチと、自動車をここで切り返しされますので輪留めの意味も兼ねています。まさに用と景です。
⑦型枠の取り付け
コンクリートを打ち込むための型枠を取り付けていきます。
⑧コンクリートの割れ防止
これはスリットの型枠です。コンクリートを敷設して伸縮により割れてしまわないように間をあける必要があるためです。それも単なる型枠ではなく、庭のデザインにも通じていけるよう配慮します。
⑨自然と人工物の境を無くす
このように曲線を描くと、コンクリートの人工的なイメージが丸く収まってきます。
⑩コンクリートの打設
コンクリートを打設していきます。一度やり始めると休む間が無いほどです。コンクリートが割れないよう、空洞ができないよう真っすぐ打てるよう注意します。
⑪防草シートの貼り付け
砂利を引く前に防草シートを貼り付けます。防草シートもいろんな種類がありますがあまり安すぎると効果が薄れるかもしれません。
⑬スリットをデザイン
スリットに砂利を並べていきます。洗い出しの模様とごろた石の模様が呼応します。
⑭直線と曲線の融和
曲線から生まれるラインは尾形光琳や狩野派の絵師達が描いた日本文化からヒントを得ています。また、直線と曲線の融和は桂離宮や仙洞御所でも用いられる小堀遠州の技法に通じる所があります。
⑮コンセプトの統一
従来よりあった日本庭園への接合点を設けた事により空間が一体となり、コンセプトの統一が図れました。導入部分においても直線的ではなく不規則な所に規則性を用いてますので、心地よいリズムが生まれます。
⑯自然素材を使いこなす
縁石に自然石を採用したため、周囲との環境に融和されました。自然素材を使いこなすのが庭師の務めです。既製品や量産品の方が安く早く誰でもできますが生み出せる価値が少なく感じます。2018年は台風、地震、大雨、猛暑、大雪など自然災害が相次ぎました。自然の猛威を感じると共に多くの恵みの恩恵も受けています。日本人が自然をコントロールするものではなく受け入れる物だと古くから感じていたからこそ、庭園文化でも自然を愛でるという影響を与えています。
⑰扇の庭の神髄
上空からみると「扇の庭」の神髄が見えてきます。
⑱お庭の完成
何より雑草や除草の作業を無くせた事。景観を壊すことなく融和できた事。空間をつなげ新たな世界を作れた事。お施主さんには喜んでいただけました。伝統技術を駆使しながら現代社会に適合していく事が大切だと思っております。見た目も使い勝手も良いというスタイルをご提供させてもらってています。